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『RED SHOES 〜殺戮ノ赤キ靴〜』
作 灰娘
 
 
 
彼女はいつも血を流している。
 
沢山の誰かの血、沢山の生き物の血…
 
自らの血も…彼女は流し続ける。
 
その自らの脚を使い、まるで踊るように血を流し続ける。
 
その脚は赤く染まり鮮やかな赤で仕上がる…。
 
まるで真っ赤な靴の様に…。
 
疲れ果て遂には息絶えるまで彼女は踊るだろう…。
 
それともその前に…
 
誰かが彼女の脚を切断するのだろうか?
 
彼女はその脚がある限り天使から嫌われる。
 
しかし彼女は踊る事を止める事が出来ないのだ…。
 
〈1〉 
 
『今週に入ってから6人…』
 
朝からニュースは物騒な話題で持ちきりだ。
この街の近郊で通り魔事件が多発しているのだ。
犯人は不明、被害者は身体の半分近くを抉られ、
飛散されるという異常極まる犯行らしい…。
犯行の手口から犯人は複数による猟奇的なものと推測されている。
 
「…怖いわねぇ…早く捕まってほしいわ…」
 
不安そうに母が呟く。
確かに物騒になり、
夜は近所を見回る警官や町内会の人々を見る。
俺も大学に入ったばかりとはいえ十分に育った身体だ、
2・3度見回りには参加している。
そのせいで、早速入ったサークルの仲間達とも遊びに行けず、
少しばかり退屈で面倒な夜を過ごすハメになっている。
 
「そうだね…早く捕まるといいね。」
 
不安そうな母に言葉を返す。
自分で言うのも恥ずかしい話だが、
俺は少しマザーコンプレックスの気がある。
幼い頃、父親と死別した母と俺…
それからその手一つで俺を大学まで入れてくれた母…
そんな母が不安そうな顔をするのは見るに堪えないのだ。
 
「ああ…そうだ、母さん?
俺、今日バイトで少し遅くなるから夜は先に食べてていいからね?」
 
「そうなの?夜は気をつけて帰って来るのよ?」
 
「母さんも仕事帰りは気をつけてね?それじゃあそろそろ行って来ます。」
 
「ええ、行ってらっしゃい。」
 
微笑む母に軽く手を振り、俺は家を出た。
 
夜、バイト先のスタッフルームで俺は帰り支度をしている。
 
「お疲れ、気をつけて帰れよ?最近物騒だからな。」
 
店長が俺に声を掛けた。
 
「ええ、お疲れ様です。
そうですね、色々事件とか多いですからね…
出来るだけ人の多い所を歩きますよ。」
 
「ま、無難で賢明だな?若いからって無茶するなよ?」
 
「分ってますって、俺、喧嘩とかからっきしですから…
それじゃあお先に失礼します。」
 
バイト先を出た俺は街中を歩いて帰ることにした。
 
家までの帰り道、商店街を抜け、
住宅地に入ると数十メートル置きの街灯の光と
僅かな家の光だけとなり少し心もとないものになる。
しかし、歩きなれた道のせいか、
バイト帰りの若干の倦怠感からか一抹の不安も無く、
ただ自宅に帰り着くことだけが頭にはあった。
 
あと3つ角を曲がると我が家に着く。
今日も何事も無く終わり、また明日が始まる。
そんな事を感じながら1つ目の角を曲がった時、
目の前の街灯の下に男性が屈んで居るのを見つけた。
スーツ姿の男性は自らの胸を押さえ呻き声を漏らしていた。
病気だろうか?思わず俺は駆け寄り声を掛けた。
 
「大丈夫ですか?具合が悪いんですか?」
 
男性は俯いたまま頭を縦に振った。
 
「救急車呼びますか?」
 
男性は直ぐに首を縦に振った。
どうやら相当具合が悪いようだ…
俺はすぐさま携帯を取り出して救急車を呼ぼうとした。
しかし、次の瞬間、男性は突然俺の胸に飛び込んできた。
思わぬ出来事に反応が遅れた俺はそのまま男性と共に道路に転んだ。
 
「なっ…!?何するんですか!?」
 
男性の突然の行動に意味が分らず怒鳴ってしまったが、
その次の瞬間俺は青ざめる事になる。
先ほどまで苦しそうにしていた男性の姿はそこには無く、
中腰でピクリとも動かず静止している男性の姿があった。
 
「…だ、大丈夫ですか?」
 
不安を憶え、俺は声を掛けた。
しかし、男性は返事をしない。
 
「…あ…あのぅ?」
 
男性に近づこうとした時、俺は誰かに塀に叩きつけられた。
 
何が起きたのか…
俺は痛みを憶える身体を起こし前方を見つめた。
そこには静止したままの男性と、見知らぬ人が立っていた。
マントの様な物に身を包んだ人の身形はこの閑静な住宅街には不自然で、
異様な物にも感じた。
自分は何が起きたのか確認するために声を掛けた。
 
「スイマセン!?なんですか急に?今、俺のこと突き飛ばしましたよね?」
 
そうだ、この怪しい人は俺を突然塀に叩き付けたんだ。
 
「早く!此処から離れろ!」
 
マントの人物が叫んだ。
その瞬間、静止していた男性の衣服が膨れあがった。
俺は悪夢でも見ているのだろうか?
先刻まで苦しそうに胸を押さえていた男性の衣服が破れそこから何かが生えているのだ。
その何かは男性の半身を蝕み、ゆっくりと動いている。
 
「え…?え…何?」
 
訳の分らない俺は上ずる声を上げて尻込みしてしまった。
 
「お前…そこから動くなよ?」
 
マントの人物が呟いた瞬間、男性の身体と何かが宙を舞った。
そして俺の足元にマントが投げ捨てられた。
 
鈍い打撃音が夜の住宅街に吸い込まれた。
 
男性の身体が落下しようとした時、その身体はまた宙へ戻った。
マントの中から出てきた人物は綺麗な弧を描きながら脚を構えた。
おれは、その姿に目を奪われた。
 
男性の身体が地面に再度戻ろうと落下し始めた瞬間、
今度は男性の身体が勢い良く地面に叩き付けられた。
マントの人物の踵が男性の身体から生えた何かを踏みつけている。
そして、男性が動く間を与えることなく、マントの人物は男性を蹴り上げた。
そして、なんて形容していいのか解らないぐらいに
真っ直ぐで鋭い美しいソバットが男性の鳩尾(みぞおち)を貫いた。
 
大人の男性が軽々と蹴り上げられ、
瞬く間に叩き込まれる蹴撃の数々…
どこぞの格闘ゲームの様な神がかった動きに俺は目を見張った。
そして街灯に照らされたマントの人物の顔に気付いた俺は更に驚愕した。
 
そこにはセミロングの黒い髪と背筋が寒くなるような鋭い瞳…
それとシャープな顎のラインとスラリと伸びた鼻筋、少し憂いを帯びた唇…
そして何よりも抜けるような白い肌の“女性”が居たのだ。
 
「コレで終わりだ…!」
 
俺が驚いているのも気にせず、
マントの女性は蹴り飛ばした男性に向かい発した。
次の瞬間、男性の身体は飛散した。
大量の赤い血液が街灯の光の中を舞った。
俺は一言の言葉も発せ無いままその光景を見ていた。
大きく弧を描いた彼女の脚は男性の血液を大量に浴び、真っ赤に染まっていた。
男性から生えていた“何か”は完全に形を留めておらずただの肉片と化している。
俺はその光景を見つめながら恐怖を感じなかった。
おかしな事に、その光景に心を奪われていたのだ。
 
「まるで…踊っていたようだ…」
 
俺の頭はどうかしてしまったのだろうか…
目の前で起きた事を形容する言葉が出てきたがこれは殺人事件なのだ。
頭では理解しているはずなのに身体のどこかでこの女性を賞賛しているのだ。
気付いたときには俺は言葉を発していた。
 
「貴方は誰ですか!?」
 
その脚を赤く染めた女性はゆっくりとこちらを見つめて、口を開いた。
 
「名前なんて無いよ… “赤い靴”…みんなそう呼んでいるよ…」
 
不適な笑みを浮かべる女性“赤い靴”…。
俺はこの女性に惹かれてしまっていた…。
そしてマントを拾った女性は夜の闇に消えていった。
俺はただ立ち尽くし、その女性を見逃してしまった…。
 
 
 〈1〉終了
 
…以下執筆中
 
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