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『彼女は決戦兵器』
作 灰娘
俺はその光景を信じられなかった。
常識では起こり得るはずの無い光景…ただただ俺はその光景を見つめていた。
決戦壱『出撃!決戦兵器!』
校庭では違うクラスの生徒達が柔軟体操を行っている。
真面目に行う人、適度に怠ける人、あからさまに怠ける人…
それを注意する教師…
ただただ、退屈な時間だった。
高校2年の6月…
7月前に張り切る太陽さんのおかげで
なかなかの暑さを感じてしまう窓際の席。
きっと、そんな俺の為だけに窓を少しだけ開けると
廊下側に座っている女子が隙間風とかに当たって
昼前に体調を崩したりするんだ。
隙間風って結構届くからな。
俺もそれで前に苦しんだ経験がある。
なんか窓開けた奴はけっして悪気は無いんだけど、
なんかそんな事で注意したりされたりって
なんか空気悪いから此処は我慢しておこうとか
考えているうちに肌寒さを感じて腕とか
鳥肌出てきた時には具合悪いんだよ。
だから俺は窓を開けないで、上着を脱いで日向ぼっこに専念しているわけだ。
そんな俺なんかさておき、クラスでは明日女子の転校生が来るという話しで持ちきりだ。
今時転校生なんてよくあるお話みたいなことだが、
その転校生は昔の幼馴染だったり、
なんか超能力使えたりとかするわけでもないだろう。
まして、明日の朝、トーストを加えた少女に角でぶつかるなんてもってのほかだ!
そんな下らない妄想やめて、おとなしく現実に帰ってきなさい。
ありがちな親の仕事の都合で引越しとか、
ちょっと面倒な理由抱えてたりで
突然の編入試験で泡食った可哀そうな奴がくるだけだから。
まぁ、教師も事前に情報を流して受け入れ態勢を整えておくという
配慮をしたつもりだろうが、
逆に期待煽って万が一ガッカリだった場合の責任はとれるのか?
年頃の男子は以外にも純情だぞ?
女子だって未だに派閥とかルックスとかで純情だぞ?
と、日向ぼっこというか昼寝しながら気にしていませんよ的に
振舞ってる俺が実はかなり気にしているに違いない。
「なぁ、モモ起きろよ?なにスカしてるんだよ?」
バレている?そんなバカな…
話しかけてきた奴は俺の友人と言いたくないが
小学から同じクラスを続けている“坂田 賢時(さかた けんじ)”
何かあれば俺に話しかけてくる、
宿題も俺のを写す、
悩み事も俺に相談する。
基本的にはムードメーカーで勉強はかなり出来ないが
なんか無駄に明るい奴だ。
この年になるとちょっとウザいかなぁ…とか、
でも一人ぐらいはこんなの居てもいいよなぁとか考えるけど、
きっと名前は賢くなる様にと親がつけたんだ。
全国の坂田さんは悪くないが、コイツは師匠と同じアホだ。
「その呼び方はやめろ、どこぞの一号生筆頭じゃないぞ俺は…」
どうやらダラダラ長い俺の考えの間に
教師もクラスも俺なんか無視して授業を終わらせていたらしい。
ちょっとくらい気にしてくれないと引きこもるぞ。
このぐらいの年の男の子は意外なほどにナイーブなんだ。
「いいじゃないモモ?それよりお前の事だから、
ただ寝てただけじゃなくどうせ明日来る転校生の女子が
可愛ければいいなぁとか考えてて
それを悟らないように外眺めたりしてたんだろう?」
俺の考えをニアピンで読めるお前を悪友と考えよう。
「なんだ?じゃあお前は興味ないのか?」
「あるに決まってるだろう?
きっと明日の朝、俺は遅刻ギリギリの女子高生と
街角でぶつかって、教室で運命的な再会を果たして淡い恋愛をするんだ。
そして親友を女性に盗られたモモはクラスで孤立して、
徐々に登校しなくなるんだよ?」
「俺はお前を孤立させたいよ、痴漢の容疑で2年ぐらい戦ってこいよ」
「そんな孤立は1週間の取調べで心が折れちまいそうだ…
まぁ、話は最後まで聞けよ?そんなお前を心配してだ。
家まで毎日プリントとかノートとか届けてくれる人は居るんだぞぉ?」
「…お前か?
押して駄目なら退いてみろ的な作戦か?
お前以外ならときめいてやるからな。」
「それは良かった、そいつは俺じゃないからな。
本当なら俺がやりたいんだがな?
モモぐらいの器量の男なら俺が家政婦にしたいものだ。」
「…お前の話はいつも本気か冗談かわからねぇ…なんか、疲れる…キモイ」
「いやな、モモ?
お前、背だってそこそこ高いし
勉強もだらしないけど俺に教えられるくらい出来るだろう?
運動も悔しいけど出来るし、
実は一人暮らしで家事全般もビックリというか
ちょっと女子が退くぐらい出来るだろう?
その無愛想さと無気力さ以外、顔も俺より格好いいかも知れないんだ…
そりゃあ、お前は協調性の無い妄想マニアで
究極の鈍感だから高校に入ってから
ずっとお前の事を気にしているC組の子の気持ちも気付かないんだ。」
「…………!?。」
「いやぁ、なんか見ているコッチがもどかしくて
皆がその子の事応援しているよ?
逆に諦めて他の男にしろとかいう女子もいるんだよ?」
「それはあとで、
『あ!本気にした?ダッセー』
とか言って俺に恥をかかせる巧妙な罠か?
まんまと引っかかった暁にはお前がいるから学校に行きたくないと
教師に伝えて不登校になってやるからな。」
「…どうしてこの子はひねくれちゃったんだろうね?
女子のお節介さん達がお前に一番親しい俺にその事を相談するのは明白なことだよ?
それをさりげなく俺が伝えて、
お前がその子の事を気付くようにするのは当たり前の流れといったところだろう?」
そんなお節介さん達とお前が俺は嫌いだ…
「…俺はそんな熱い眼差し一度も感じた事はないぞ?
それに俺はお前を除いたクラスメイト全員と平等に親しいつもりだ。
それが俺の勘違いなら、全員と決別して不登校になってやる。」
「…随分、不登校にこだわるな…いい加減クドイって…」
「じゃあ聞くぞ?
俺だって年頃の高校2年生だ。
夏を前にして劣情を抱かないわけじゃないし、
そんな子が居るなら俺もチャンスぐらいあやかりたいものだしな!
正直、彼女とか欲しいしな。」
「…そんなぶっちゃけたモモ…俺は好きだぜ…。
でも、本当に存在すら気付いてなかったのはビックリだ。
一年の時から毎日、休み時間には女子の友達を理由にこのクラスに通い続け、
クリスマス前にはそわそわし、バレンタイン前にもそわそわし、
長期休暇の前は哀しそうにする彼女…かなり奥手であって話かけることも叶わなかった日々…
そんな年頃男子の羨ましいというか死ねばいいのにランク1位の
イベント状態のお前を思う彼女に謝れ!
そしてやっぱり自分で気づけ、これからはお前もそわそわしていろ!」
「…賢時…なんか人生って面倒くさいから
俺はショートカットして生きていたいんだよ…
出来れば、その子が仕事できるタイプだと俺は恋に落ちるよ…」
「…お前って結構自分優先で生きているんだなぁ…なんか駄目人間の匂いするよ?」
そんな下らない会話を続け、
午後の授業もダラダラと受け、
何事も無く一日が終わった…。
結局、賢時は女子の事を教えてくれなかったし、
さりげなく気にした俺も、誰なのか判らずじまいだった。
そんな俺を見た賢時は鼻で笑ったので、
咄嗟に鼻にボールペンを差し込んでしまった。
翌日、俺は今日の転校生なんかより
C組の気になるアノ子が誰なのか考えてクラス名簿とか
久々に引っ張り出したりして夜更かししたので寝不足だ。
そんな俺を察している男が登校中に話しかけてくる。
「モモ〜、はよぅ!今日は寝不足で血圧低めかぁ?」
「更にお前なんかに朝から話しかけられて具合も悪くなってきたわ…
今日もう病院行って帰るわ。」
「…うわぁ〜、不登校になりそうだよ、この人…」
「お前もなんだかんだで普通に登校してたら
遅刻ギリギリの転校生とぶつかる夢は潰えるぞ?
そうじゃなくても今日は俺がお前の前を歩いて角ごとに一度、周囲確認してやるよ。」
「なんか陰湿な虐めに聞こえるけど、途方も無くバカの発想だよ?」
「あ、バカとか言われた?これはもう虐めだ。
転校生が来たHRで坂田君は陰湿な虐めをする心の欠けた人間だという話をしよう。」
「あれ?モモ?俺が虐められてない?俺の勘違いかな?」
賢時と毎度毎度のバカ話を繰り広げているうちに学校に着き、
ざわつく教室に入った。
教室は当然、期待とかなんか色々、爽やかだったり粘っこい感情が渦巻いた会話が繰り広げられていた。
「…おはよぉ〜」
気だるい俺。
「おっ…はよぉ〜っ!」
耳障りな賢時。
それに反応し挨拶を返して頂ける優しいクラスメイト達。
「モモ君達おはよ〜♪今日の転校生どんな子が来るのかなぁ?」
予想しなくてもわかる話題が振られた。
そんな話題を振ったのは賢時がいつも怒られている風紀の人“碓井 貞世(うすい さだよ)”だ。
いつも小奇麗で気配りも利き、
ショートヘアーとキリリとした眉がチャームポイントの彼女はまさに風紀っぽい人で
男子の人気もそこそこ高いと賢時は言っていた。
しかし、俺は賢時が怒られるといつも一緒に居る俺も悪いと
言われるのでそんな団体責任を押し付ける人は賢時くらい嫌いだ。
「まぁ、誰だっていいさ。」
素っ気無く、あくまで俺は素っ気無くだ。
というか今は、転校生より気になる事で頭が一杯だからな。
そんな素振りで俺のキャラがアクシデントに弱い奴とかになったら嫌だしな。
「可愛い子だといいよなぁ〜、モモ?碓井みたいな小姑キャラじゃない子とかさぁ?」
よし!賢時よ!流石だ、お前はそういうキャラだ。
そうやってバカっぽい話で場を流せ!
そして、お前はきっと碓井が好きなんだ。
俺にはたまに気になる子とかの話でモゴモゴして『いないよ』とか言ってあきらかな素振り見せるし、
あえて碓井に突っかかるその姿勢!もう中学生日記並みの恋愛感だ。
という事で俺の中では賢時×貞世で出来上がっているんだ。
そして今日も早速なんか言われて『なにを〜!』『なによ〜!』みたいな展開になって、
家に帰ってから嬉しがるんだろう?
「なによぉ?坂田!私に喧嘩売っているわけ?」
「そうカッカするから小姑みたいなんだよ?広い心を持とうぜ?」
ほら来た!予想通りだ!
賢時〜、お前は転校生なんかより碓井に一生風紀を直して貰いなさい。
碓井も満更じゃないはずだ。
「…どうせ賢時の心なんて空き缶に溜まった雨水くらいだろ?」
「うわぁ!?そんなさりげないモモの一言は俺傷つくよ?」
キーンコーンカーンコーン…
まぁ、ありきたりなタイミングで鐘がなり、教師もやってくる。
「ほらぁ、皆座れ〜、鐘なったぞぉ〜!」
教室にひしめく期待感…さぁ、教師よ!どう斬り出す!?此処大事だ!
ガララッ!
なんか教師が斬り出す前にドアが勢い良く開いた。
全員がそのドアの方に眼をやった。
そこに女生徒が立っていたのは当たり前だ。
しかし、彼女はあきらかに普通の生徒に見えなかった。
クラス全員がざわついた。
折角の機会が奪われた教師はかわいそうだが、この際無視しても大丈夫だろう。
彼女は長い“ブロンドの髪”と“灰色の瞳をしていた”。
なんか予想の斜め上なのか下なのかを行かれた転校生はドイツ人だそうで、
親がなんかの教授で日本の研究プロジェクトで長期滞在するから着いてきたそうだ。
一応の日本語は話せるという事でクラス全員の不安は若干薄れた。
「初メマシテ、貴様等!
今カラ付キ合ワサレル“リーベ・シュツルムヴィント”デス。
日本語ハ嫌イデスガ、コミュニケーションノ為ニ憶エマシタ。
貴様等コソドイツ語ヲ学ベヨナ?ヨロシクオネガイシマス。」
あれ?
俺だけかな?
なんか彼女といきなり心の距離が出来たような……。
いやいやいや、きっと彼女も緊張しているんだよ?
それに日本語って、『かな・カナ・漢字』と組み合わせが世界一難解とか言われているしな…
そうだよ、第一印象が良い奴より最初から自分曝け出してる人の方がきっと良い奴だよ?
なぁ?みんな?
「というわけで、今日からクラスメイトのシュツルムヴィント君だ。
まだ日本語が上手に話せないので接し方が判らないとか言う奴は、
日本語を彼女に教えるという名目で彼女と打ち解けなさい。
ところでシュツルムヴィント君?
折角だから愛称とかあるのかな?
親しみやすい状況を作るのはまずは名前を呼び合うことからだ!」
教師が今更自分の態勢を整えようとしている。
そして“シュツルムヴィント”という呼び方に長さとか面倒くささとか感じて
さり気無い感じで教師らしく呼び方を決めようとしている。
ていうか最初から名前で呼べばよかったとか考えてないよな?
ていうか苗字で愛称は作りづらいぞ?
「シュツルムヴィントさん?リーベちゃんって呼んでいいかな?」
クラスの女子の誰かさん!ありきたりな流れだが素晴らしいぞ!
そうやって出来るだけ間を空けないで発言するなんて、
いくらそのまんま名前を呼ぶだけでも素晴らしい回答例だ!
俺みたいなダラダラした人間とかには出来ないし、
あと10秒空けたら賢時が変な愛称を叫んでいたところだ。
「えー!?シュツルムいいよ!堀秀●さんが叫んだらスゲー事になるよ!」
賢時ぃ!?
なんか愛称と関係ない事言ってるぞ!
それはお前の考えだけだろう!?
なんかシュツルムとかドイツ人のニュアンスだけで
ゲルマン忍法は使えないから!
彼女は黒い兄弟じゃないよ!?
ちなみにシュトルムだから!
「ソウデスネ、リーベ様ト気軽に呼ンデ下サイ。」
なんか賢時スルーされたのはいいとして、
この人のなんかニュアンスがずれた言葉使いに教師突っ込んでくれないかなぁ…?
「それでリーベさんの席は先生の前の席…一番前にしようと思う。
まだ色々馴れるまでは先生に近い方がいいだろう?」
「エッ?先生ナンカ唾飛ビソウナ顔ナノデ後ロノ席ガ好ミデス。」
「……そうか…リーベさんは後ろがいいのか……
なら学級委員の源の隣なんかが丁度いいな……。」
うわぁ…なんか教師のモチベーションがあからさまに下がっている。
割とショックだけど気にしないで話を進めている。
大人だな…大人の対応だ。
ていうか弱いなぁ、この人見た目よりナイーブな人だ。
というわけで“リーベ・シュツルムヴィント”という関わったら
絶対面倒な存在がこのクラスに加わった。
学級委員の源!
その…いつかフルネームで紹介出ると思うからそれまで…
それからもリーベさんの事は任せた!
俺は関わらない事に決めた!
きっと賢時が後で絡むから、適当にあしらうように。
昼休み。
購買に並ぶ俺、飲み物を買いたい賢時、そして学級委員の源を従えるリーベ。
そしてドイツ人を珍しがりながら購買でなんか買う複数の生徒。
まぁ、状況としてリーベさんがなんか朝とかバタついて
お弁当を持ってきていなかったとかなので
源が連れてきたということだな。
俺はそんなリーベさんには出来るだけ近づきたくないし、
源よ頑張れ!と心の隅で応援するだけだ。
「源ぉ!リーベちゃん!何買うの?一緒に食べようよ!」
…流石賢時ぃ…
俺の空気を一番呼んでいるなぁ…
ビニールスリッパがあったら思わず叩いているところだよ?
事なかれ主義の俺はそそくさと退散より、無難に参加の道を選ぶハメになるんだよ?
「アラ?奢ッテ下サルンデスカ?
オ優シイ方デスネ!
源!聞キキマシタ?奢ッテ下サルンデスッテ♪」
俺は出さないぞ…賢時…お前の責任だ。
なんか流れというかお約束的だが、
賢時のせいで君子は危うきに近寄っている。
とりあえず後で間違った解答のプリントを賢時に貸してやろう。
「リーベちゃん!リーベちゃん?
ドイツってソーセージとかビールのイメージが強いけど、なんか他にあるの?」
「エエ…
ビールトカ、ソーセージシカ出テコナイ小サナ脳味噌ニメモリーシナサイ、
フランクフルトナドノ地方ニヨッテハ林檎ノワインノ方ガ人気デスノヨ?
ソレニ、アーヘン大聖堂ヲ初メ、シュパイヤー、ケルン大聖堂、ローマテ帝国ノ国境線、
ヴァルトブルグ城、バンベルグハ町自体ガ世界遺産ニ指定サレテマスノヨ?
全部デ29ノ文化遺産ト、1ツノ自然遺産ガアルノデス。
貴様等ノ様ナ者ノ頭ニハ後、
サッカートカ、シューマッハトカシカ出テコナインダロウ?」
よし!この性悪女!
俺はお前が皆から孤立してゴメンナサイと改めるまでは一言も口を訊かないことにしよう。
「トコロデ…モモサン?」
………。
………。
アレ?なんだろう?
「モモサンハ、何カ趣味トカアルンデスカ?」
………。
………。
………。
あっれぇぇぇぇぇぇ?
なんか賢時散々にバカにして放置したと思ったら、
なんか俺に話題振って来たよ!?
………い…いや…割と当然の流れだ…。
賢時を相手にしないとした場合、源以外に話すのは俺しかいないし、
午前中はずっと源イジッてたから、
まぁ、俺にくるわなぁ…ちくしょう…
ていうか、なんでコイツまで『モモサン』とか呼んでいるの?
「いや…コレと言って趣味はないかな…」
「ソウデスカ?私ハ祖国ニ居タ時カラ乗馬ヲ嗜ンデイマスノ♪」
ちくしょう…
思わず普通に返答して決意崩しちゃった…
そしてさり気無く俺、バカにされているよね?
「宜シカッタラ、親睦ヲ兼ネテ是非、一度ゴ一緒ニイキマセンコト?」
あれぇぇ?
なんか賢時とかと反応違うんですけどぉ…
なんか誘われてるよ?
俺、誘われちゃってるよ。
「私も乗馬って興味あるなぁ…ねぇ?私も行ってもいい?」
「源、貴方ハオ呼ビデナクッテヨ?」
源誘ってやれよぉぉぉぉ!?
ていうか源誘えよ!
最初の友達っぽいぞ!?
「なんだよ〜、リーベちゃん〜、モモにだけ優しくしてぇ〜、ずるいぞモモ
お前は既に他に思ってくれている人が居るんだぞう?
リーベちゃんも今日会ったばかりの
こんな無愛想な鉄面皮一歩手前の男なんか止めなって!」
そうだ!賢時!
さっきまですっかり忘れてたが、俺はC組のダレ子ちゃんに思われているんだ。
それを確かめて好みのタイプならお近づきになるんだよ?
こんな国境以外に色々壁のある奴なんて一生俺のベルリンは崩壊しないからな!
「ソウデスネ!
早速今週末ナンテ大丈夫デスカ?
ソウデスネ!
細カイ打チ合ワセモシナクテハナラナイデスノデ放課後付キ合ッテ下サイネ!」
おおぉーい!
俺の意見はNOだぞ?
そして賢時に構ってあげてね?
「いや…そんな俺はいいよ、そういうの苦手だからな。
源、誘ってやれよ?
折角女の子同士の友達だし、俺なんかより楽しいよ?」
「ソンナ、謙遜ナサラナイデ下サイ?
私ハ貴方ニ御用ガアルノデシテヨ?」
うわぁぁ…なんか変なフラグ立ってるよ?
賢時?源?
なんかこの空気解るよね?
よぉーし…協力して折ろうね?賢時?源?頼むよ?
「モモ、女の子がこんなに積極的に誘っているんだ…恥をかかせるのか?」
「ごめんね…リーベちゃん…私そういうのちょっと鈍感で…モモ君?行ってあげなよ?」
よぉーし!お前等に期待した俺が浅はかだった!
断れる雰囲気じゃねぇじゃねぇか!
アレか?今度こそ新手の虐めか?
意思疎通がこんなにも取れなかったのはきっと俺が赤ん坊の頃、
泣いているのがオシメなのかミルクなのかわからない父親並みと判断するぞ?
お前等なんて嫌いだ。
……いや…断る手段は幾らでもあるじゃないか!
とりあえず今は生返事で返して後で都合がつかなくなったとかでいいじゃないか!?
「あ…ああ、分ったよ、とりあえず予定あけとくよ?」
「エエ♪ソレデハオ昼休ミモ終ワルノデ放課後、少シオ話シシマショウネ?」
なんか、凄い釈然としない昼休みを過ごしてしまった。
多分普通の転校生ならきっと、ときメ●とかの3倍ハシャぐ所なんだろうけど、
俺には罰ゲームで心霊スポットめぐりを企画でやらされる新人アナウンサーの気分だ!
なんかその午後の授業中、奴がチラチラとこちらを見ている気がしてならないし、
なんか賢時が余計な事を要らない速さで人に話して
他の人も俺をチラチラと見ている。
俺は目立ちたくない人間だ!
賢時の上履きにゼリー飲料を流し込んでやろう。
放課後…憂鬱だ。
しかし、チャンスが無い訳でもない!
奴は今、掃除に借り出されている!
ならばその隙を突いて帰宅する事が可能だ!
ていうか、俺は帰る!
あんな得体の知れない奴に構う事も
なんか噂される事も俺は堪えられない!
理由なんて『急用が入った』とかで今の日本は8割乗り切れるはずだ!
さぁ!賢時も放って俺はそそくさと帰るぞ!
そして教室を飛び出した俺の前に“彼女”が現れた。
「リーベ・シュツルムヴィントさんに近づいてはいけないのです!」
それが彼女の第一声だった。
なんか…目の前に小さい子が居る…。
ああ…一応高校生か?背低いなぁ…俺の胸より低そうだよ?
で…何だって?今、この子、俺の気持ちを汲み取った発言した?
「モ…モモ君!リーベ・しゅちゅるむヴィントはとっても危険なのです!」
ブフッ!?……
今、『しゅちゅ』って言った!お母さん!この子『しゅちゅ』って言いました!
僕は笑ってもいいですか!
「えっと…ごめん…名前なんだっけ?俺のクラスじゃないよね?」
「あ…C組の竹鳥です。竹鳥 神楽(たけとり かぐら)です!」
へぇー…C組にこんな子居たんだぁ…小さくて気付かなかったのか?
あれ?
なんか数々の伏線の中登場したな…なんだったけか?
なんか嫌な予感しかしねぇよ?
それにこの子…今日知ったばかりの転校生に危険とか平気で吐いて…
いや…そうだ…誰だって思うよ?この子は正しい!
「ああ…なんか解んないけど俺もその気持ちは判るよ。
じゃあもう帰るから…」
「ドコニ行カレルノデスカァ?」
「!?」
一瞬の出来事だった。
そう、いきなりアイツの声がしたんだ。
その瞬間、訳がわからなくなった。
なんか全身が痛い…混乱している…何が起きた!
まずは状況を確認しよう…。
一呼吸置いた時、そこが校舎裏の倉庫前だという事に気付いた。
それと廊下で訳がわからなくなってから1分しか経っていないという事。
そして、目の前にリーベ・シュツルムヴィントが居るという事。
「放課後ニオ話シシタイト言ッタジャナイデスカァ?」
…笑っている。今の俺にはこの上なく気味が悪い…
ホラー映画で殺される俳優の気分だ。
このリーベって奴はどこかオカシイとは思っていたが、
こんな理解不能な展開を持ち出すなんて…
俺は冷静になろうと努力したが、汗が噴出している自分に気付き更に動揺してしまった。
「ソンナニ怖ガラナイデ下サイ?
トイッテモ無理デスカ?…。
マズハ少シオ話シマショウカ?」
「なんだ!お前!なんなんだ!?」
「“ナンダ”トハ?フフッ…
フラウニ対シテハモット優シク語リカケルベキデスヨ?
モモサン?
実ハ私、日本ニハ貴方ニ会ウ為ニヤッテキタンデスノヨ♪」
「!?……それは、嬉しいお話か?嬉しくないお話か?」
精一杯の見栄…なんか逃げても無駄な気がした。
本当は小学校3年生ぶりに泣き出したい気分だ。
「フフッ…嬉シイオ話デスヨ?
貴方ハ元居タ所ニ戻ルノデスカラ♪
正確ニハ、今ノ貴方ノ一部…ソノ人口心臓、世界デ唯一成功シタ縮退炉ヲ…」
…なんか、頭おかしい人だ!?
間違いない!最早完全にアッチ側の人だ!
「お前!そんな有りもしない妄想抱いて、今日初めて会った人間に何がしたいんだよ!」
俺だってそろそろ怒るよ!
大丈夫、落ち着け…
なんか状況がさっぽり飲み込めないし、
問題は山積みだけどこのドイツ人は中学生的な妄想の中生きているに違いない!
「過去ノ大型ハドロン衝突型加速器ニヨル極小ブラックホールデノ検出実験カラ始マリ、
人類ノ新エネルギー開発事業カラ生マレタ夢ノ結晶…。
極小ブラックホールヲ人口降着盤ニテ覆イ、
維持スルノニ成功スルマデノ数多ノ失敗ト犠牲…
ソシテ極小化シタブラックホールカラ放射サレルホーキング放射ノ莫大ナ熱量ノ変換実験……
ソレガドウイウ経緯カ…
貴方ニ話シテモ理解出来ナイデショウ?
デモ…ソレハコノ世界ノ希望ト未来ヲ作レルノデス…
何モ出来ナイ、ソンナ力ノ無イ貴方ノ中デ腐ラセテイイ代物デハナイノデス!」
確かに、片言の日本語とアニメ張りの設定みたいな話に理解出来ないが、
そんな俺なんか全く無視してリーベ・シュツルムヴィントは…、奴は動いた!
渇いた破裂音が響く、その瞬間俺の身体は地面に転がっていた。
駆け抜ける激痛に俺はパニックに近い症状に見舞われ呼吸が出来ない。
視界には破れたスラッグスと自分の脛から流れる血液が見える。
「コレデ、貴方ハ動ケナイ♪サァ、縮退炉ヲ取リ出シマショウ♪」
笑っている…ブロンドの髪が太陽を背にして透けるように輝きながら…
見つめている…影になった顔の中で輝く灰色の瞳が…!
きっと“悪魔”とはこういう時の何かを指すものだと俺は思った…。
俺は死ぬ。
しかし、奇跡とは本当に起こり得ることで、それを体験した者が居たからこそ、
奇跡という神の所業を人類は信じているんだ。
轟音と共にリーベ・シュツルムヴィントの身体が視界から消えた。
そして同時に校舎裏の倉庫が砕けた。
今度はなんだ!?一体何が起きているんだ!
誰か助けてくれ!
この悪夢から俺を引きずり出してくれ!
「貴様ァァーーーーーー!」
悪魔の絶叫が聞こえたと共に先刻まで倉庫だったものから煙があがる。
俺は目を疑った。
その時、自分の脛の激痛すら薄れる状況が目の前で広がっていたからだ。
悪魔リーベ・シュツルムヴィントは怒りの感情を露にした表情で上空5メートル程をホバリング飛行している。
リーベの脹脛が開き何か放射している姿に本当に現実を見失いそうになっている俺は、
女子の制服のチェックのスカートから覗くものに気をやる余裕など持ち合わせて居なく、
ようやく動いた身体で地面を這っていた。
此処から早く離れよう!
それだけで今の俺は精一杯だ。
しかし、後方を気にして振り返った俺の視界には更に予想外のモノが飛び込んできた。
倉庫だった瓦礫の中から歩み出てきた小さな影…その姿に俺は息を呑み、思わず止まってしまった。
そこには、つい先ほど、廊下でであった小さな女の子…
“竹鳥 神楽”の姿があったからだ。
俺はその光景を信じられなかった。
常識では起こり得るはずの無い光景…ただただ俺はその光景を見つめていた。
空を飛ぶブロンドの転校生“リーベ・シュツルムヴィント”…
それを真っ直ぐな瞳で睨む小さな女の子“竹鳥 神楽”。
どこぞの三流SF小説の世界に引き込まれた気分だ…
一体何が起きてこれからどうなるのか…
俺はただ黙ってその動きを見ている事しか出来なかった。
「リーベ・シュツルムヴィント!貴方達の計画は見過ごせない!何よりモモ君を殺させはしない!」
竹鳥が叫ぶ。
「邪魔ヲスルナァァァーーーー!」
もう何が起こっているのか…
リーベの絶叫と共にリーベの前腕部分が開き金属部品が飛び出した。
それと同時に渇いた破裂音…いや、銃声が響いた。
「竹鳥っ…!?」
思わず叫んでしまった。
そしてようやく騒ぎに気付いた教師や生徒達が集まってきた。
しかし俺は警察とか色々な事より、
竹鳥が撃たれてしまった事に気が集中してしまっている。
だが、俺の目の先には血にまみれた無垢な少女の姿ではなく
弾丸を手の平で受け止めている少女の姿だった。
ざわめきの中リーベが驚いている。
「…イナーシャルキャンセラー!?ソンナ実用化シテイタナンテ!?」
「私達はいつか来る決戦の日に向けて力を備えているの…
その力は守る為にあり、人々を脅かす為じゃない!
誰かの命を奪う為にあるんじゃないの!」
竹鳥から異様なまでの威圧感を感じた…
それに反応したのかリーベの動きは固まってしまっている。
「そんな事も忘れてしまった貴方達になんか私は負けない!
誰かの犠牲の上に立つ理想など、エゴ以外の何者でもないもの!」
竹鳥が跳んだ。
その姿はなんとも勇ましく俺の忘れていた情熱に火が灯りそうな光景だった。
「ヒッ…!?」
リーベの小さな悲鳴、そして一瞬にリーベを捕まえた竹鳥。
このありえない光景を俺と集まった教師、生徒達はただ見つめていた。
竹鳥が絶叫した!
「ブラストォ!コレダァァァァァァァァァ!」
竹鳥の腕が変形し、リーベの身体に突き刺さる!
肘だったと思われる場所が激しく回転を始めた時、激しい光を放った。
その強烈な閃光なのかそれとも脚の脛の限界からか俺は気を失っていた。
気がついたときには病院のベッドで寝ていたのだから。
「…なんだ…ここは…」
先刻までの状況が夢だったのかそれともまだ夢の中にいるのか…
どちらにしてもそろろそろ発狂してもいいくらいに俺は慌てている。
「気がついたかい?モモ君?」
掛けられた言葉に過敏に反応してしまった。
一刻も早く自分を取り戻したい俺にとっては予想外の出来事に対処出来ないのだ。
「驚かしてしまってスマナイ…
アレから君は脚の治療のために病院に運ばれたんだよ?
そして今起きたところだ。
色々あって慌てているのは分るよ…でも落ち着いて欲しい。」
「アンタ…誰だ?」
動揺している俺、心なしか息遣いが荒い…
「僕は“竹鳥 尚輝(たけとり なおき)”医者であり、科学者でもある。
そして、君が見た“竹鳥 神楽”の開発者さ!」
俺は何かとんでもない事に巻き込まれているのを肌で感じたが、精神が持たないので、次回に続く!
『彼女は決戦兵器』
決戦壱『出撃!決戦兵器!』 終
※以下、執筆中…
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